著名人の自死において、インターネット上ではしばしば無責任な憶測やデマが流布されます。郷里氏の件についても、一部のまとめサイトやSNSで「事務所との金銭トラブルがあったのではないか」「家庭崩壊や借金を抱えていた」といった根拠のない噂が囁かれた時期がありました。
しかし、報道関係者の綿密な取材および警視庁の発表資料を精査すると、そうした俗説は完全に否定されます。
第一に、郷里氏は大手老舗である青二プロダクションの重鎮として、亡くなる直前までテレビ番組のナレーション(『ビートたけしのTVタックル』など)やゲーム音声のレギュラーを多数抱えており、経済的な困窮とは無縁のポジションにありました。第二に、家族関係も非常に良好であり、現場に残された遺書には家族に対する深い愛情と、自らの身体の限界によって先立つことへの切実な詫び状が記されていました。
ネット上の安易なゴシップに惑わされることなく、彼を死に追いやった本質は「病魔による視覚障害と、それによって声優生命を断たれることへの絶望」という純粋かつ過酷な職人としての葛藤にあったという事実を直視する必要があります。