硯のメンテナンスにおいて、洗浄と同じくらい重要なのが「乾燥」と「保管」の工程です。ネット上の誤った情報の中には「日光に当てて殺菌乾燥させるべき」というものがありますが、これは絶対にしてはいけません。
急激な直射日光乾燥は、石の水分バランスを急激に崩して表面の反りやヒビ割れを引き起こします。水洗いが完了した後は、まず吸水性の高い乾いたタオルや手ぬぐいで表面の水分をしっかりと拭き取ります。その後、風通しの良い室内で半日〜1日程度「完全な陰干し」を行ってください。
湿気が残ったまま密閉箱にしまうと、硯の表面や木箱にカビが発生し、硯箱の漆や木地を傷める原因になります。完全に乾いたことを確認したら、付属の桐箱や布袋に収め、直射日光とエアコンの風が直接当たらない湿度の安定した場所に保管します。固形墨と硯をセットで丁寧に手入れし、大切に保管する所作は、書道に向き合う集中力や精神性を高める心理的ルーティンとしても大きな価値を持ちます。