すべての衣類を同じ手順で処置できるわけではありません。デリケートな獣毛繊維や特殊なコーティングが施されたアウター類では、洗剤選び一つが生死を分けます。
特に問い合わせの多いダウンやデリケート素材の油シミ抜きでは、浸水による羽毛の油分(天然の油脂コーティング)の脱落や、ダウンパック内の乾きムラに最大限の警戒が必要です。表面のナイロン・ポリエステル生地に飛んだ油シミに対しては、水洗いを全体に行うのではなく、薄めた中性洗剤を含ませた固く絞ったタオルで表面だけをつまみ洗いするのが基本となります。
また、ウールやシルクなど水に濡らすと縮みや型崩れを起こす素材には、有機溶剤であるベンジンを使った油シミ抜きの注意点を把握しておく必要があります。ベンジンは油を完全に溶かし去る強力な揮発性有機溶剤ですが、引火性が極めて高く、室内で使用する際は換気が必須です。さらに、蒸発速度が極めて速いため、作業を手早く行わないと溶けた油が境界線に集まり、乾いた後に強烈な「輪ジミ」を残します。これを防ぐには、外側から中心に向かってぼかすように叩き、作業直後にドライヤーの冷風を当てて均一に揮発させる高度なハンドリングが求められます。
上記の通り、クリーニング店での油シミ抜き料金と評判を調査すると、一般的なドライクリーニング単体(500〜1,000円程度)では、実は「水溶性を含む複合的な油シミ」は完全に取りきれないケースが散見されます。確実に除去したい場合は、通常のドライクリーニングに加えて「ウェット併用特殊シミ抜き技術」を標榜する優良店を指定し、見積もりを取ることが賢明です。