「江戸時代の平均身長は男性約155cm、女性約145cmと日本の歴史上最も低かったのをご存知ですか?一体なぜそこまで縮んでしまったのか?」――この問いに対して、かつては「昔の人は小柄だった」という曖昧な感覚論で片付けられがちでした。しかし、国立科学博物館の名誉研究員をはじめとする形質人類学者たちの手によって、各地の墓地遺跡から出土した数千体もの大腿骨測定が進んだ結果、極めて具体的な数値が浮かび上がっています。
発掘された人骨の大腿骨長から身長を割り出す推定計算式(トロッター&グレッサー法など)によると、江戸時代男性の平均身長はおよそ155cm〜156cm、江戸時代女性の平均身長はおよそ143cm〜145cmの範囲に集中しています。現代の基準に照らし合わせると、男性は現代の小学6年生から中学1年生男子の平均、女性は小学5年生から6年生女子の平均とほぼ同等です。
この数値は、現代日本人との身長差比較において圧倒的な開きを見せます。厚生労働省の最新健康統計データが示す現代成人男性の平均(約171.5cm)、成人女性の平均(約158.0cm)と比較した場合、男性で約16cm、女性でも約14cmのギャップが存在します。江戸の町を再現した博物館の長屋の天井が低く、鴨居(かもい)の位置が約170cm前後で作られているのは、当時の人々にとって頭をぶつける心配が皆無だったからです。