劇場の空間構造を把握する上で、まず各フロアの特性を客観的に整理しておく必要があります。新橋演舞場は舞台と客席の距離が比較的近く設計されているものの、フロアごとに鑑賞体験は全く異なります。
まず新橋演舞場の1階席の見え方ですが、1列目から6列目付近の前方エリアは、出演者の息遣いや細かな表情の機微、衣装の擦れる音までダイレクトに届く圧倒的な臨場感が魅力です。しかし、床の段差(傾斜)がなだらかなため、前の座席に座る観客の座高によっては舞台中央の足元が遮られる「センター被り」が発生しやすい側面を持ちます。一方で、横通路を挟んだ7列目から10列目付近は段差がしっかりつき始め、舞台全体と役者の表情を同時に視野へ収められる実質的なプラチナシートといえます。
続いて愛好家の間で評価が極めて高いのが新橋演舞場の2階席の見え方です。2階席は1階後方席の上に大きく張り出す設計になっており、空間的な舞台との距離は想像以上に近く感じられます。特に前方の傾斜が絶妙に設計されており、前の人の頭が視界を遮ることがほとんどありません。舞台美術の全景や照明の幾何学的な美しさ、群舞のフォーメーションを俯瞰で捉えるには最高のポジションです。
一方で注意を要するのが新橋演舞場の3階席の視界です。最上階である3階席はかなりの急勾配となっており、高所恐怖症の人が思わず足をすくませるほどの傾斜角があります。演劇関係者の間でも「鳥の目線で舞台を見下ろす感覚」と称される通り、舞台奥までクリアに見渡せるメリットがある反面、役者の表情を肉眼で識別するのは極めて困難です。さらに、安全確保のために設置された金属製手すりが視界の下部に干渉するという固有のハードルが存在します。
そして新橋演舞場を象徴する特別な空間が左右の壁沿いに設けられた「東桟敷席」「西桟敷席」です。新橋演舞場の桟敷席の評判を調べると、「一度は座ってみたい憧れの席」として語られることが多くあります。専用の掘りごたつ風テーブルが備え付けられ、履物を脱いで足を伸ばしながら優雅に観劇できる快適性は格別です。舞台下手側に位置する東桟敷席からは花道を出入りする演者を間近で斜め後方から見下ろす独特のアングルが楽しめ、舞台上手側の西桟敷席からは花道全体を遮るものなく視界に捉えることができます。ただし、舞台に対して斜めを向いて座る構造上、長時間の観劇では首や腰に一定の負担がかかる点は心得ておくべきポイントです。