インターネット上のコミュニティや飼い主仲間の会話では、「14歳だから動けなくなっても当たり前」「夜鳴きも年のせいだから耐えるしかない」といった諦念が散見されます。しかし、獣医学の臨床現場において、この「加齢のせい」という思い込みこそが愛犬のQOL(生活の質)を著しく損なう最大の盲点と指摘されています。
例えば、排泄の失敗や粗相を「痴呆による失禁」と決めつけていたところ、実際は重篤な膀胱炎や尿路結石による激痛、あるいはホルモン異常(クッシング症候群等)による多飲多尿だったという事例は後を絶ちません。また、「呼んでも来なくなった」原因が頑固な認知機能低下ではなく、単に耳道が耳垢や腫瘍で塞がっていたり、甲状腺機能低下症による無気力だったりすることもあります。
不可逆的な老化現象と、医学的治療で緩和できる疾患を混同してはなりません。「加齢だから治療法がない」と自己判断せず、かかりつけ医による血液生化学検査や超音波エコー検査、関節の触診を受け、治療可能な不快感や痛覚を丁寧に取り除く姿勢が極めて重要です。