「ざるそば」を考案したとされるのが、江戸・深川の洲崎にあった蕎麦店「伊勢屋長兵衛」だと言われている。当時、他店との差別化を図ろうと考えた伊勢屋長兵衛は、水切れが良く涼しげな竹ざるに蕎麦を盛り付けて提供し始めた。これが爆発的な人気を博すこととなる。
ただ竹ざるを使うだけでなく、提供する蕎麦そのものの質や、一緒につけるつゆの仕様にも一段上のこだわりを持たせた。竹ざるの網目から余分な水気が自然に落ちることで、時間が経っても麺が伸びにくく、最後まで香り高い状態で味わえるという実用的な利点もあったのである。水切りという機能美が、そのまま贅沢な食体験へと昇華された瞬間だった。