ネット上の掲示板やSNSでは、「2000年のドットコムバブルで崩壊したネットワーク機器大手シスコシステムズの再来だ」という言説が定期的にトレンド入りします。しかし、この言説には重大な事実誤認が含まれています。
シスコが急落した当時の株価収益率(PER)は100倍を超え、売上成長の裏付けを欠いた純粋な投機熱が株価を押し上げていました。対照的に、エヌビディアは株価の上昇スピード以上に純利益が数十倍へと拡大したため、フォワードPERは30〜40倍前後のレンジにとどまっています。利益成長が株価を正当化してきたという点において、当時のシスコとは財務健全性の次元が異なります。
しかし、火のないところに煙は立ちません。プロの機関投資家が注視しているエヌビディアバブル崩壊論の根拠は、まったく別の2つの構造リスクにあります。
ひとつは「過剰設備投資サイクルの反動」です。マイクロソフトやメタなどの巨大顧客が、将来の計算需要を先取りしてデータセンターを急拡大させた結果、実社会でのAIマネタイズ(収益化)が追いつかなければ、一時的に設備投資を絞る局面が必ず訪れます。設備投資が10%削減されるだけで、半導体メーカーの出荷額はレバレッジがかかって大きく落ち込む「ブルウィップ効果(鞭振り効果)」が働くリスクは無視できません。
もうひとつは、製造を一手に担う台湾積体電路製造(TSMC)への依存と地政学リスクです。先進パッケージング技術「CoWoS」を含む先端プロセスの大半を台湾のファウンドリに依存しているため、サプライチェーンの分断や台湾海峡情勢の緊迫化は、一瞬にして供給麻痺を引き起こす物理的ボトルネックとなり得ます。