ゴキブリの幼虫を見つけた際、多くの人が真っ先にドラッグストアへ走り、部屋全体に薬剤を行き渡らせる「くん煙剤」を購入します。しかし、害虫防除の専門家の間では、「発生初期における安易なくん煙剤の使用は逆効果を生みやすい」というのが定説です。ここには、広く知られていない3つの盲点が存在します。
第1の盲点は、「卵鞘(卵カプセル)にはどんな強力な殺虫剤も効かない」という生物学的特性です。卵鞘の外壁は非常に強固な特殊タンパク質で覆われており、気化した殺虫成分を完全にシャットアウトします。くん煙剤を焚いて室内にいた幼虫や成虫が全滅したように見えても、隙間に産み付けられた卵鞘の中身は無傷のまま生き残ります。そして数日〜数週間後、薬剤の効果が薄れた頃に何十匹もの赤ちゃんが平然と孵化してくるため、根本解決になりません。
第2の盲点は、薬剤の煙による「巣の拡散」です。くん煙剤の煙が届かない壁の内側や家具の深部、配管の奥深くに潜んでいた幼虫や成虫が、刺激に驚いて逃げ惑い、これまで被害のなかった寝室やリビングのクローゼットへと活動拠点を広げてしまう危険があります。
第3の盲点は、侵入経路の無視です。外から入り込んだクロゴキブリの幼虫に対し、室内で薬剤を撒くだけでは意味がありません。侵入経路を塞がない限り、換気扇やサッシの隙間から次から次へと新たな個体が補給され続けるという不条理な戦いが続くことになります。