関係者が口を揃えて語るのが、加藤剛の撮影現場における誠実な姿勢だ。早朝からの厳しい京都の撮影であっても、彼は常に完璧に台詞を頭に入れ、共演者や現場スタッフの一人ひとりに対して丁寧なお辞儀と挨拶を欠かさなかったという。NGを出さないことでも有名で、その真摯な姿勢が現場全体にピンと張り詰めた心地よい緊張感をもたらしていた。
ある元スタッフはこう述懐する。「加藤さんは、カメラが回っていない場所でも大岡忠相そのものの品位を保っておられました。殺陣の稽古でも裏方のスタッフに深く感謝の意を示し、若手俳優の話にもじっくりと耳を傾ける。あの温かさと誠実さがあったからこそ、何十年もの間、誰からも愛される奉行を演じ続けられたのだと思います」。役柄と演者自身の人間性が完全に同化していたことこそ、名演が生んだ真実なのだ。