相馬市街地を貫流して太平洋へと注ぐ宇多川は、古くから氾濫を繰り返す暴れ川として知られていた。この脅威を封じ込め、沿岸部の安全な都市開発と農業用水の安定確保を両立させるために策定されたのが、宇多川治水総合開発事業である。
その中核構造物として建設された松ヶ房ダムは、堤高46メートル、堤頂長177メートルを誇る重力式コンクリートダムだ。コンクリート自体の自重によって貯水圧を支えるこの形式は、強固な岩盤が広がるこの渓谷地形において最適な工法として選定された。福島県土木部が主導した建設工事では、断層の処理や地盤のグラウチングに当時の最先端技術が投じられ、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった未曾有の揺れにも耐え抜く堅牢さを実証している。
国土交通省が定める全国的な河川管理基準に照らし合わせても、本堤体の構造安定性は極めて高い評価を得ている。豪雨時に押し寄せる濁流を一時的に貯留し、下流の流下能力に応じた安全なペースで水を排出する洪水調節能力は、気候変動下における地域防災の絶対防衛ラインとなっている。