外見が似ていることから混同されがちな「三津浜焼き」と「広島風お好み焼き」ですが、製法・具材・構造を紐解くと、まったく異なる思想で作られていることがわかります。その決定的な違いと、松山のソウルフードとしての歩みを比較検証します。
最大の違いは「麺の味付け」「牛脂(ケンネ脂)と紅白ちくわの使用」「二つ折りの半月型」という3点に集約されます。
広島焼きは、生地の上にキャベツや豚肉を重ねて蒸し焼きにし、茹で麺を合わせて丸い形のまま仕上げるのが基本です。一方、三津浜焼きは鉄板の上で麺(うどんまたは中華そば)に特製ソースでしっかりと下味をつけて炒めます。そこに削り節、キャベツ、刻んだ牛脂、そして松山ならではの具材である紅白ちくわを投入。最後に薄いクレープ状の生地とともにコテで豪快に「二つ折り」にして半月状で提供されます。
この独特なスタイルの起源は、大正から昭和初期にかけて松山港(三津浜)周辺で広まった「一銭洋食」に遡ります。港湾労働者や船乗りたちが短時間で安く、エネルギーを補給できるよう、腹持ちの良いうどんを台(ベース)にした「台付きうどん」が考案されました。牛肉を扱う精肉店から安価に仕入れた牛脂を隠し味に加えたことで、動物性の強烈な旨味が加わり、三津浜独自の食文化として定着した歴史があります。