味の劣化以上に警戒しなければならないのが、お弁当の冷凍ご飯に潜む衛生リスクです。一部の生活情報ブログやSNSでは「凍ったまま弁当箱に入れれば保冷剤代わりになって一石二鳥」といった誤ったライフハックが散見されますが、これは食品衛生管理の観点から極めて危険な行為と言わざるを得ません。
米類に潜む代表的な病原菌がセレウス菌(Bacillus cereus)です。セレウス菌は土壌や農作物に広く生息しており、熱に非常に強い「芽胞」を形成するため、炊飯時の100℃前後の加熱でも完全に死滅することはありません。ご飯が冷め、菌の好む適温(約20〜40℃)に置かれると、芽胞が発芽して急速に増殖を開始します。
自然解凍中の冷凍おにぎりや弁当箱の内部は、まさにこの菌にとっての温床です。冷凍庫から出されたご飯は、周囲の空気に触れることで激しい結露を起こし、表面に多量の水分を発生させます。この水分と、室温下でゆっくり上昇する温度が組み合わさることで、セレウス菌は爆発的に繁殖し、嘔吐型食中毒の原因となる毒素(セレウリド)を産生します。この毒素は再加熱しても分解されにくいため、口に入れた時点で激しい吐き気や腹痛を引き起こす引き金になりかねません。