猫が一般的な網戸(ポリプロピレン製)を破壊してしまう背景には、単なる「いたずら」では片付けられない動物行動学的な本能が潜んでいます。現場の獣医師やドッグ・キャットトレーナーへの取材から浮かび上がった主な要因は以下の3点です。
第一に、外を飛ぶ鳥や昆虫に対する強烈な狩猟本能の誘発です。猫の動体視力は人間の数倍優れており、窓の外を横切る羽音や微細な動きを捉えた瞬間、脳内で捕獲スイッチが入り、全身の体重を乗せて突進します。体重4kg前後の成猫であっても、ダッシュ時の衝撃荷重は15kg以上に達するため、経年劣化した薄いポリプロピレンネットは一撃で裂けてしまいます。
第二に、網目の構造が爪研ぎや木登りの対象として最適化されてしまう点です。一般的な18〜24メッシュの網戸は猫の鋭い爪がちょうど引っ掛かりやすく、爪研ぎの感触を気に入った猫が登坂行動(クライミング)を開始します。ネットに体重を預けて登る過程で、網目が押し広げられたり、枠を固定する押さえゴム(ビート)ごと外れて枠ごと脱落する危険があります。
第三に、外の匂いや気配に刺激される縄張り拡大欲求と脱走衝動です。特に未去勢・未避妊の個体や、元野良猫として外の世界を知っている保護猫の場合、網戸越しに外猫の姿や匂いを感じ取るとパニックや威嚇状態に陥り、遮る障害物を力尽くで突破しようと爪を立てます。