西脇市が「日本のへそ」を標榜する背景には、単なる地域おこしのキャッチコピーにとどまらない厳密な地理学的根拠が存在します。その根幹にあるのが、兵庫県西脇市 日本のへそ 由来を決定づけた「東経135度」と「北緯35度」の交差点です。東経135度は1886年(明治19年)に日本標準時子午線として定められた経線であり、北緯35度は本州の主要部を東西に貫く重要な緯線です。この両者が交わる陸地上の特異点こそが、西脇市上比延町(かみひえちょう)の岡之山山麓でした。
この東経135度北緯35度交差点 経緯を辿ると、大正時代にまで時計の針を巻き戻すことになります。大正12年(1923年)、当時の旧陸軍参謀本部陸地測量部による精密な現地観測に基づき、加古川のほとりに花崗岩製の「経緯度交点標柱」が建立されました。これが現在「大正のへそ」と呼ばれる史跡です。
興味深いのは、2002年の測量法改正に伴う世界測地系への移行によって生じたドラマです。大正期に日本測地系(東京天文台を原点とする測量法)で定められた旧標柱から、全地球測位システム(GPS)を用いた世界測地系による真の交差点は、南西へわずか437.6メートル離れた山中に位置することが判明しました。現在の日本へそ公園内には、この大正時代の標柱と、平成期にコンペによって建設された4本の巨大な円柱状モニュメント「平成のへそ」が共存しています。約400メートルのズレは技術の進化を物語る証拠であり、2つの地点は散策路「ふれあいトンネル」を介して歩いて往来できる仕掛けになっています。