看護計画の第一歩は、対象者が置かれている状況が本当に「感染リスク状態」という看護問題に該当するのかを正確に識別することから始まります。NANDA-I(国際看護診断協会)の定義において、感染リスク状態とは「病原体に侵入され、感染症に罹患する危険性が高い状態」と規定されています。ここで極めて重要なのは、発熱や局所の発赤・排膿といった明らかな感染症状がすでに現れている場合は「リスク状態」ではなく、感染症そのものを対象とした実在型の看護問題へと移行しなければならないという点です。
臨床現場で看護計画を展開する際、アセスメントすべき感染リスク状態の危険因子は多岐にわたります。代表的なリスクファクターは以下の通りです。
- 生体防御バリアの破綻:手術創、外傷、熱傷、褥瘡、皮膚剥離、侵襲的デバイス(末梢点滴、中心静脈カテーテル、尿道留置カテーテル、気管挿管チューブなど)
- 免疫機能の低下・抑制:抗がん剤治療や放射線療法による白血球・好中球減少、ステロイド薬や免疫抑制剤の長期投与、後天性免疫不全
- 宿主の基礎的抵抗力低下:重度低栄養(血清アルブミン値の低下)、コントロール不良の糖尿病、肝不全、腎不全、進行がん
- 発達段階・加齢要因:免疫系が未成熟な新生児・乳幼児、加齢に伴う細胞性免疫の低下や貪食能減弱を抱える高齢者
- 環境要因:病室内の衛生状態、病原体との接触リスク、医療従事者の手指衛生不備による交差感染リスク
指導者やプリセプターから「なぜこの患者に感染リスク状態の看護計画が必要なのか」を問われた際、「点滴をしているから」「術後だから」という皮相的な理由づけでは通用しません。「胃全摘術による広範な手術侵襲と腹部ドレーン留置に加え、術前からの低栄養(Alb 2.8g/dL)と糖尿病の既往があり、好中球の遊走能低下と局所防御機構の破綻が重複しているため」といったように、宿主側の要因と外来要因を掛け合わせてアセスメントすることが、説得力ある看護計画の土台となります。