ネット上の掲示板やSNSでは、寿司職人の男女比や「男寿司」という言葉を巡って活発な議論が続いています。「職人の性別など関係なく、旨い握りを適正価格で出してくれればそれでいい」「頑固親父のピリついたカウンターより、女性職人の細やかな気配りの方が居心地が良い」という声が多数を占める一方、「職人の無骨な手さばきや、男性的な力強さを感じる寿司屋の空気が好き」という伝統情緒を支持する意見も根強く残ります。
そうした中で、実在する「男寿司」「男寿し」という屋号を掲げ、独自の哲学で地元客を唸らせている老舗の存在は見逃せません。そこにあるのは単なるジェンダーの固執ではなく、板前としての覚悟や土地の食材への愚直な情熱です。
例えば、広島県福山市の「男寿し(おとこずし)」は、昭和47(1972)年創業という半世紀以上の歴史を誇る名店です。店舗の公式案内や取材メモによると、店主自らが鑑札(買受人の権利)を保持し、市場へ直接買い付けに出向く徹底ぶりを見せています。瀬戸内・笠岡諸島の天然魚を中心に地産地消を貫き、「ビンゴフィッシュ」を広める地魚応援団としても選出。夜のコースも手頃な価格帯から用意され、時には写真撮影付きコースなど柔軟な企画を展開し、家族連れから地元の食通まで幅広く愛されています。
一方、山形県天童市にある「男寿司」は、全国区のテレビ特番『ザワつく!金曜日』の「百年後に残したい名店」に登場して話題をさらいました。山形県絶景スポット代表にも選ばれた経歴を持ち、婚礼披露宴や法要といった大規模な宴席コース料理を柔軟に手掛けるだけでなく、顧問弁護士と連携して客の生活相談にまで耳を傾けるという破格のサービス精神を発揮しています。「男寿司」という豪快な名前に反して、もてなしの本質は極めて繊細で地域密着型です。
このように、「男」という言葉を冠する店舗の現場でも、提供されている価値は威圧的な男性優位思想ではなく、「魚選びに妥協しない頑固さ」「客の喜びに徹底して尽くすもてなしの心」であることがわかります。