ネット上で「誰の言葉なのか?」と頻繁に議論されるこの名句の主は、戦後日本を代表する直木賞作家であり、希代のギャンブラーとしても知られる阿佐田哲也(本名:色川武大、1929–1989)です。金字塔的小説『麻雀放浪記』をはじめ、数々の勝負録やエッセイ『うらおもて人生録』などで、阿佐田哲也はこの逆説的な人生観を繰り返し書き残しています。
阿佐田氏は青年期、持病であるナルコレプシー(特発性過眠症)に苦しみ、一般社会の規律正しい勤め人生活に適合できませんでした。「朝起きて定時に出社する生活から逃げ出したい」「怠惰に生きたい」という切実な欲求から選んだ道が、麻雀や競馬といった勝負師(バクチ打ち)の世界でした。
ところが、勝負の世界は社会の会社員生活よりも遥かに過酷でした。食うか食われるかの博打で勝ち残り、怠惰な自由を維持するためには、牌の山を瞬時に記憶する暗記力、指先のミリ単位の技術、相手の心理を透視する観察眼を極限まで磨き上げねばなりません。結果として彼は、「誰よりも朝から晩まで麻雀研究に明け暮れ、徹夜で牌を握り続ける超勤勉な勝負師」へと行き着いてしまったのです。自著の中で述懐されたこの自嘲と真理こそが、言葉の真の原点です。