「どんなに高価なクリップを使っても落ちてくる」と嘆く人の多くは、クリップの保持力ではなく留め方に根本的な原因を抱えています。バンスクリップのハーフアップが崩れる理由を力学的に紐解くと、以下の3つの盲点が浮かび上がります。
第1の盲点は、「まとめた毛束だけを空中で挟んでいる」という点です。クリップが頭皮に対して固定されるためには、すくい上げたトップの毛束と一緒に、頭皮に沿っている下側の動かない髪(アンカーとなるベース毛)を数ミリでも噛み合わせる必要があります。浮いた毛束だけを挟んでいては、歩行時の振動や頭の傾きによって重力に従い滑り落ちてしまうのは当然の物理現象です。
第2の盲点は、スタイリング剤の選定ミスと塗布バランスにあります。オイルを毛先中心にたっぷりとつけすぎると、髪表面の摩擦係数が極端に低下し、クリップのプラスチックやアセテート樹脂の歯から髪がツルツルと逃げてしまいます。逆に何もつけていない乾燥毛ではパラパラとサイドから髪がこぼれ落ちるため、油分ではなく適度な粘着力を持つヘアバームを根元近くから薄くなじませる工程が欠かせません。
第3の盲点は、クリップのサイズ・ホールド幅と毛量のミスマッチです。ハーフアップで取る毛束の厚みは、フルアップ(全頭まとめ)の約3分の1から半分程度しかありません。全頭用の10cmを超える大型クリップで少量の毛束を挟むと、スプリング(バネ)の噛み合わせに隙間が生じ、どれだけきつく留めたつもりでも時間とともに脱落します。バンスクリップの落ちてくる対策として最も即効性があるのは、毛量に適合した適切なサイズのクリップを選ぶことなのです。