ネット上やSNSでは時折、「松本白鸚はすでに舞台を引退したのではないか」「体調不良で活動が困難なのではないか」といった誤解や憶測が散見されます。しかし、これらの噂の多くは事実の曲解に基づいています。
誤解が生じる最大の理由は、「ライフワークである大型ミュージカルの卒業」と「歌舞伎俳優としての引退」が混同されている点にあります。『ラ・マンチャの男』に終止符を打ったのは、作品の過酷な運動量(激しい殺陣や2時間超の上演時間)を考慮したプロとしての引き際であり、演劇活動そのものを停止したわけではありません。
歌舞伎界における長老格の役割は、毎月の舞台にフル出演することだけではありません。名門の芸の核心を子や孫に口伝し、一門の求心力を保ち、重要な狂言の要所で舞台の品格を保証することにあります。白鸚は現在、自らの健康状態を極めて理性的に管理しながら、高麗屋の芸の伝承を最優先事項として活動を継続しています。