かつて「スクリーンで上映されない作品は映画ではない」という頑なな価値観が存在した。しかし、その固定観念を微粒子レベルに破砕したのが、ハリウッドを代表する巨匠たちの参入である。Netflixは潤沢な制作費と妥協のないクリエイティブな自由を提示し、名匠マーティン・スコセッシ監督による超大作『アイリッシュマン』を結実させた。3時間に及ぶ上映時間、デジタル若返り技術の投入、そして圧巻の重厚劇。従来のスタジオ体系では実現不可能とまで言われた野心作である。
さらに、アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』がアカデミー賞で主要部門を総なめにした出来事は、映画産業の地殻変動を象徴する歴史的事件となった。モノクロの美しい映像美と個人的な記憶を追体験させる繊細な演出は、ストリーミング作品が芸術的頂点に達し得ることを世界に証明してみせたのだ。また、緻密な映像計算と冷徹な人間観察で知られるデヴィッド・フィンチャーのような鬼才が、プラットフォームの看板クリエイターとして独占作品を手掛け続けている点も見逃せない。彼らの存在が、サービスの質を根底から支えている。