白豪主義の牙城が牙を剥いたのは、外からの移民だけではない。大陸の先住民族アボリジナル・ピープルに対しても、血統を断絶させ白人社会へと同化させる苛烈な断種・隔離政策が推し進められた。混血の先住民の子供たちを強制的に親元から拉致し、施設や白人家庭で再教育した「盗まれた世代(Stolen Generations)」の悲劇は、オーストラリア現代史における最大の汚点である。
この過酷な史実を世界に知らしめたのが、実話をもとに制作された歴史ドキュメンタリーや映画『ラビット・プルーフ・フェンス』だ。大陸を南北に縦断する1500キロメートル以上の害獣フェンスを道標に、母親の元へと命がけで歩き続けた幼い少女たちの姿は、国家権力が犯した文化的ジェノサイドの残虐さを今も生々しく告発している。