ハズキルーペTVCMシリーズが放映された際、日本中のお茶の間に走った衝撃は今なお記憶に新しい。過剰なまでの演出、映画のワンシーンを思わせる映像クオリティ、そして一度聞いたら頭から離れない強烈なフレーズ。その裏側には、従来のテレビCMの枠組みを完全に無視した破格の制作費投入があった。
松村謙三氏は広告代理店主導の一般的な制作プロセスを嫌い、自ら企画からキャスティング、演出のディレクションまでを徹底的に指揮した。ハリウッドで活躍する世界的俳優の渡辺謙や、高い好感度を誇る武井咲といったトップスターを起用。単なるタレントの宣伝動画ではなく、短編映画並みの予算と機材を惜しみなく投入したのである。数十億円から百億円規模とも噂された膨大なテレビCM出稿費は、一見すると無謀なリスク投資に映った。だが、その真意は「中途半端な広告は捨て金になるが、圧倒的なインパクトは100倍の返還率を生む」という独自の勝算に基づいていた。