SNSやネット掲示板上で毎シーズン激しい論争が巻き起こるのが、「アイスクリームは食べてよいのか」「牛乳を飲むとウイルスが悪化するのではないか」という疑問です。ここには医学的な事実と俗説が入り混じった根深い誤解が存在します。
まず、「インフルエンザでアイスは食べてもいいのか」という問いに対する医療現場の見解は、条件付きで「極めて有効な選択肢」となります。高熱と激しい喉の痛みによって唾液すら飲み込めない時期において、冷たく滑らかなアイスクリームは喉の局所炎症を冷却麻痺させ、痛みを一時的に緩和する効果を持っています。また、1個で約150〜200kcal程度のエネルギーと適度な糖質・脂質を無理なく補給できるため、脱水と飢餓状態に陥りやすい発熱初期には貴重なカロリー源となるのです。
ただし、選択する種類には注意が必要です。脂肪分が高すぎる濃厚なプレミアムアイスクリームは消化不良の原因になり得ますし、酸味の強い柑橘系シャーベットは喉にしみます。選ぶべきは、添加物が少なくマイルドなバニラアイス、あるいは電解質を含んだジェラートタイプです。
一方、インフルエンザで乳製品による悪化が囁かれる背景には、ウイルス感染に伴う「二次性乳糖不耐症」のメカニズムがあります。腸の粘膜がダメージを受けると、乳糖を分解する酵素であるラクターゼの分泌が一時的にストップします。この状態で牛乳を大量に飲むと、分解されない乳糖が腸内で水分を引き込み、激しい水様便や腹痛を引き起こしてしまうのです。したがって、「下痢症状を伴っている場合は乳製品を一切絶つ」「下痢がなく喉越しの良さを求めるなら、少量のヨーグルトやプリンは摂取して構わない」というのが臨床的な正解となります。
また、看病する保護者が最も神経を尖らせるインフルエンザの子供に食べさせてはいけないものとして、硬いスナック菓子や飴玉、ナッツ類が挙げられます。咳き込んだ拍子に気道へ吸い込まれて気道異物や誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こす事故が多発しているためです。小児期においては、大人の基準以上に「物理的な形状の安全性」に配慮しなければなりません。