つるし柿の成否は、柿を手に入れた瞬間から始まっています。まずは原料となる渋柿の品種(蜂屋柿・平核無柿)の特性を正しく把握することが第一歩です。
日本を代表する渋柿の横綱格である「蜂屋柿(はちやがき)」は、先が尖った大玉で果肉が極めて柔らかく、乾燥させるとねっとりとした濃厚な極上の干し柿に仕上がります。ただし果実が大きく水分量が多いため、乾燥に時間がかかりカビのリスクがやや高くなります。一方の「平核無柿(ひらたねなしがき)」は偏平な四角形で種がなく、果肉の繊維がしっかりしているため初心者でも扱いやすく、均一に乾きやすいという大きな利点を持っています。また、中国地方などで親しまれる縦長の「西条柿(さいじょうがき)」も強い甘みを持つ人気の品種です。
渋柿の皮むきとヘタの処理における職人技
作業工程の中で最も事故が起きやすいのが、渋柿の皮むきとヘタの処理です。最も重要なのは、枝の「T字(あるいはL字)の軸」を絶対に切り落とさないことです。この軸が紐を結びつける唯一のフックとなります。
皮むきの極意は、以下の3ステップを忠実に守ることです。
- ヘタのガクをそぎ落とす:果実に密着している緑〜茶色のヘタ(ガク)の先端を、包丁やハサミでぐるりと一周切り取ります。ガクと果肉の隙間は雨水や湿気が溜まりやすく、カビの最大の温床になるため、隙間を露出させて風が通るようにします。
- 軸周りの皮を薄く残す:軸の付け根の周囲数ミリだけ皮を残しておくと、乾燥が進んだ際に果肉が自重で崩れたり、紐から外れて落下したりする事故を防げます。
- 縦方向に均一にむく:ヘタから先端に向かって、包丁を縦に滑らせて皮をむきます。ピーラーを使っても構いませんが、皮の厚みが不均一になると乾燥ムラの原因になるため、できる限り一定の深さで滑らかにむくのがコツです。
外れない・カビさせない!つるし柿の紐の結び方
皮をむき終えたら、乾燥用の紐を取り付けます。つるし柿の紐の結び方には、麻紐やポリプロピレン製のすずらんテープを使用します。紐の長さは70〜80cm程度に切り分け、その両端に柿を1個ずつ結びつけるのが基本スタイルです。
結び方は、紐の両端に輪を作り、T字の枝をくぐらせてキュッと引き絞る「巻き結び(クローブヒッチ)」や、二重結びでしっかりと固定します。このとき最大のポイントは、「2連にした柿の高さを5〜10cmほどずらす」ことです。干した際に柿同士が風で揺れて接触すると、触れ合った面が乾かずに一晩でカビが発生します。柿と柿が絶対に触れ合わない配置を計算して紐を結ぶことが、現場の鉄則です。