物語の主人公は、お正月に床の間へ堂々と飾られている「かがみもち」です。人間たちからは「立派だね」「おいしそうだ」と褒めそやされ、一見すると誇らしげに座っているように見えます。しかし、彼には人知れぬ深刻な悩みがありました。
視線の先では、仲間のお餅たちが過酷な運命をたどっています。杵で「ぺったんぺったん」と情け容赦なく叩きのめされ、びよーんと無残に引き伸ばされ、ぷつんと小さくちぎられる。そればかりか、熱い網の上で「ぷーっ」と膨らむまで焼かれ、最後は醤油やきな粉をつけられて人間の口へと消えていく――。床の間からその光景をまじまじと見下ろしていた鏡餅は、言い知れぬ戦慄を覚えます。
「あんな痛い思いをして、食べられてたまるものか!」と決意した鏡餅は、突如としてむくむくと手足を生やし、三方(さんぽう)を飛び出して全力疾走で逃げ出します。このダイナミックな脱走劇こそが、おもちのきもち あらすじの幕開けです。