オフィスワークの現場で最も頻繁に直面するのが、Microsoft Excelで箱ひげ図を作成した際に現れる「丸印(プロット点)」をめぐる混乱です。社内会議で売上データや残業時間の分布を報告した際、上司やクライアントから「この箱から飛び出している丸い点は印刷ミスか?」「なぜ勝手にグラフの外に点が打たれるのか」と問われ、回答に窮した経験を持つ担当者は後を絶ちません。
この箱ひげ図の丸印の意味は、前述の「1.5 × IQRルール」によって外れ値と判定された個別のデータポイントそのものです。現代の標準的なグラフ描画アルゴリズムでは、箱ひげ図ひげの長さの定義が見直されています。古典的な箱ひげ図では、ひげの先端を単純に「データの最大値・最小値」まで伸ばして描画していました。しかし、それでは極端な異常値が1つあるだけで、ひげが異常に長く伸びてしまい、箱(中央50%の分布)が極端に押しつぶされてデータの形状が把握できなくなります。
そこで開発されたのが、外れ値検出機能を備えた箱ひげ図です。この方式では、ひげを伸ばす限界を「境界線(Q3 + 1.5×IQR または Q1 - 1.5×IQR)の内側にある最も極端な実データ」までに留めます。そして、境界線を踏み越えた特異なデータのみを「丸印」として単独表示する仕様が採用されました。
箱ひげ図Excel外れ値表示を扱う際には、特有の仕様にも注意が必要です。Excel 2016以降に標準搭載された箱ひげ図機能では、グラフの系列の書式設定内に「外れ値のポイントを表示」というチェックボックスが存在します。このチェックを外すと、外れ値の丸印が非表示になり、ひげが最大値・最小値まで強制的に伸ばされます。しかし、プレゼンで見栄えを良くするために安易に外れ値を隠蔽すると、データの真のばらつきや潜んでいる重大な問題を上層部に見誤らせる危険性があるため、原則として表示したまま報告するのがデータリテラシーの鉄則です。