エド・シーランの音楽を語る上で欠かせないのが、飾らない私生活と家族への無償の愛です。彼の生い立ちは決して平坦なものではありませんでした。幼少期に受けた耳の手術の後遺症で軽度の難聴と吃音(どもり)を抱え、学校では赤毛や大きな眼鏡を理由にいじめに遭った過去を持ちます。しかし、エミネムのラップを完璧に歌いこなすことで吃音を克服し、ギターの腕前を磨きながらロンドンの地下鉄や路上で路上ライブを繰り返す下積み時代を過ごしました。
そんな彼の人生における最大の心の支えとなったのが、高校時代の同級生である妻チェリー・シーボーン(Cherry Seaborn)です。二人は2015年に再会して交際をスタートさせ、2018年12月に親しい友人のみを招いた極秘の結婚式を挙げました。世界的ラブソングとなった『Perfect』は、まさに彼女との純粋な愛を歌った楽曲として知られています。
歌詞の一節にある「Baby, I'm dancing in the dark, with you between my arms(暗闇の中で君を抱きしめて踊っている)」という情景は、二人が裸足で芝生の上を踊った実体験から着想を得たものです。近年、チェリーが第2子妊娠中に悪性腫瘍(がん)の診断を受けるという過酷な試練や、恩人である音楽プロデューサーのジャマール・エドワーズの急逝など、相次ぐ悲劇に直面した際も、二人は手を取り合って苦難を乗り越えました。これらの生々しい感情の揺らぎが、後のアルバム『−(サブトラクト)』の重厚なバラードへと結実しています。