突発性難聴における治療の勝敗は、時計の針との戦いです。臨床現場において、発症から治療開始までの期間は発症後48時間以内が理想的なゴールデンタイムとされ、遅くとも72時間以内に専門治療を開始できるかどうかが完治への分水嶺となります。
内耳の蝸牛(かぎゅう)にある有毛細胞への血流が途絶えると、細胞は酸欠と栄養不足に陥ります。発症から時間が経過するほど細胞の変性が進み、発症後2週間を過ぎてから治療を開始した場合、どのような強力な薬剤を用いても聴力が元の水準に戻る確率は著しく低下します。
見逃してはならない突発性難聴の初期症状には明確な特徴があります。
- 耳閉感(じへいかん):耳の中に水や綿が詰まったような強烈な圧迫感
- 耳鳴り:「キーン」という高音金属音、または「ゴー」という低い機械音の持続
- 音の歪み:人の声が二重に響く、電子音や食器の擦れ合う音が異様に不快に響く
- めまい・ふらつき:天井がぐるぐる回るような感覚や、歩行時の浮遊感(半規管への波及)
「朝起きた瞬間」や「仕事中に突然」など、発症した日時を明確に特定できるのが突発性難聴の際立った特徴です。「いつからか徐々に聞こえにくくなった」のではなく、「〇月〇日の〇時頃からおかしい」と感じた場合は、即日耳鼻咽喉科を受診することが鉄則です。