日本のホットケーキ史を語る上で欠かせないのが、1957年(昭和32年)に登場した森永製菓の「ホットケーキの素」だ。戦後復興から高度経済成長期へと向かう日本において、家庭のフライパンで誰でも簡単に綺麗な狐色のケーキが焼ける製品は、革命的な存在だった。
フライパンでプツプツと気泡が立ち、ひっくり返すと現れる美しいきつね色。立ち上る甘いバニラの香り。昭和の子供たちにとって、ホットケーキは憧れの「洋風のおやつ」の象徴だったのだ。分厚く焼かれた生地に四角いバターが溶け出し、琥珀色のシロップが滴る光景は、日本人の原風景として強く記憶に刻まれている。