芝公園の奥深さは、芝生とタワーという近代的な借景にとどまりません。南西部に位置する18号地・19号地周辺へ足を踏み入れると、そこには古代から近代に至る東京の記憶が重層的に保存されています。
木立の中に突如として現れる急峻な石段を登った先にあるのが、都内屈指の規模を誇る前方後円墳、芝丸山古墳です。全長約112メートルに及ぶこの墳丘は、5世紀前半に築造された南武蔵の有力首長墓と推定されています。頂上部には、日本全国を測量した伊能忠敬を顕彰する記念碑がひっそりと佇んでおり、都会の超高層ビル群の足元に太古の陵墓がそのまま残されている事実は、訪れる者に強い知的好奇心を与えます。
さらに、古墳の北側に広がる人工渓谷都立芝公園もみじ谷は、明治時代を代表する宮廷造園家・佐々木七十郎の設計思想を色濃く残す名所です。人工的に切り開かれた岩場には落差約10メートルの渓流が再現され、鬱蒼としたモミジの巨木が頭上を覆います。紅葉シーズンはもちろんのこと、初夏の新緑期にも木漏れ日とせせらぎが心地よい清涼感を生み出しています。
これらの自然遺構から歩を進め、大本山増上寺の境内へ抜ける増上寺周辺散策は、江戸の宗教都市としての面影に触れる極上のルートです。徳川将軍家の菩提寺として威容を誇る本堂の背後に東京タワーがそびえ立つ景色は、伝統と現代テクノロジーが共生する東京の縮図と言えます。