オープンな情報だけでは見えてこない組織の実像を把握するため、現役・退職済みの職員や講師、さらには子どもを通わせる保護者への取材・アンケート情報を分析しました。そこには、圧倒的な信頼性と旧来型組織ならではの課題という二面性が浮かび上がります。
まず肯定的な評価として圧倒的に多いのが、教育カリキュラムと研修制度の卓越した完成度です。
「音大を出たばかりで指導経験がゼロでも、振興会の研修システムを徹底的に叩き込まれるため、指導者としての基礎体力は民間のどの教室よりも確実に身につく」(30代・元システム講師)
「JOCのような舞台で、小学生が自分で作曲したオーケストラ曲並みの作品をエレクトーンで堂々と即興演奏する姿を見ると、この教育システムの底力に鳥肌が立つ」(通塾歴6年の保護者)
一方で、内部や現場からは制度設計や旧態依然とした組織風土に対するシビアな指摘も散見されます。
「振興会本部は公務員のように手厚く保護されているが、全国の教室の現場を支えているのは特約店の経営状態とフリーランス講師の献身。本部と現場講師の温度差は埋まりきっていない」(40代・現役講師)
「少子化が進むなかで、子どもの集客が厳しくなっている。大人の音楽教室やオンラインレッスンへのシフトを進めているが、伝統あるメソッドにこだわるあまり、デジタルのスピード感に乗り遅れている面がある」(元本部スタッフ)
ヤマハ音楽振興会の評判は、教育コンテンツの質に関しては国内外で最高峰の評価を得ているものの、運営基盤や現場への利益還元という点において、特約店や講師の間で長年蓄積された不満が存在している実態が窺えます。