SNSや一部のヘルスケア情報サイトでは、「うつ伏せで寝ると胸郭が安定して安心感を得られる」「お腹を温めて入眠がスムーズになる」といったメリットが強調されることがある。しかし、睡眠医学と生体力学の観点から検証すると、うつ伏せ寝の危険性と首への負担は他の姿勢と比較して群を抜いて高く、常習化は深刻な骨格異常を招くリスクを孕んでいる。
うつ伏せ寝が危険視される最大の理由は、呼吸を確保するために首を左右どちらかへ約80〜90度近く強制的に回旋させた状態が数時間持続する点にある。頸椎の回旋可動域の限界までひねり続ける動作は、頸椎関節や周囲の神経根、さらには脳へ血液を送る椎骨動脈に持続的な牽引ストレスを与える。「朝起きると首が寝違えたように回らない」「指先にピリピリとした痺れを感じる」といった症状の裏には、うつ伏せによる頸椎の損傷が潜んでいるケースが少なくない。
さらに、うつ伏せは腰椎の前弯を極端に強めるため、椎間関節の衝突を引き起こし、慢性的な腰痛の温床となる。胸郭が全体重で圧迫されることで横隔膜の上下運動が妨げられ、一回換気量が低下して呼吸が浅くなる弊害も無視できない。「うつ伏せでしか眠れない」という人は、自律神経の過剰な緊張によって胸骨周囲の筋群が硬直していたり、仰向けで腰が浮いて痛むために消去法で選んでいたりする構造的トラブルを疑うべきである。