結論から申し上げますと、「々」単体に決まった読み方は存在しません。「人々」なら「びと」、「時々」なら「どき」、「佐々木」なら「さ」と読むように、直前にある漢字の音や訓をそのまま引き継いで発音するのがこの文字の唯一のルールです。
多くの方が「簡単な漢字の一種だろう」と思い込んでいますが、文化庁が定める「常用漢字表」や法務省の「人名用漢字」のどこを探しても「々」の文字は見当たりません。この文字の正体は、漢字ではなく「踊り字(おどりじ)」や「重ね字」「送り字」と呼ばれる約物(やくもの:言語の記述に用いられる記号)の一種です。
正式名称は「同の字点(どうのじてん)」といいます。直前の漢字と同じ文字であることを表す符号に過ぎないため、ひらがなの「っ(促音)」や「ー(長音符)」と同じく、単独で固有の音や意味を持つことは言語構造上あり得ないのです。
漢和辞典を引くと「部首:ノ(の・はらいぼう)」「総画数:3画」として掲載されているケースがありますが、これは出版社が検索の利便性を考慮して「便宜上」割り振った分類に過ぎません。本来の文字体系において、部首も画数も持たない純粋な記号である点が、「々」という存在の最も大きなパラドックスといえます。