シリーズを語るうえで避けて通れないのが、2013年11月30日に発生したポール・ウォーカーの不慮の事故死です。当時、『ワイルド・スピード SKY MISSION』の撮影は半分ほど残されており、製作元のユニバーサル・ピクチャーズとキャスト陣は企画の中止すら真剣に検討したと伝えられています。
しかし、ヴィン・ディーゼルをはじめとする制作陣は、「ポールが最も誇りに思える形で作品を完成させ、彼をスクリーン上で永遠に生き続けさせること」を決断しました。ポールの実の弟であるカレブ・ウォーカーとコディ・ウォーカーがスタンドインとして撮影に参加し、名門VFXスタジオのWētā Digitalが最新のデジタルフェイス技術を駆使して、未撮影のシーンを補完したのです。
そうして生まれたのが、映画史に刻まれるあの伝説的なラストシーンです。白いトヨタ・スープラに乗ったブライアンが、ダッジ・チャージャーを駆るドムの横に並びかけ、こう声をかけます。
「Hey, thought you could leave without saying goodbye?」
(おい、さよならも言わずに出ていくつもりか?)
これに対し、ドムは言葉を発さず、静かな微笑みだけで返します。二台の車は並走し、やがてドムのモノローグが重なります。
「It’s never goodbye. No matter where you are, whether it’s a quarter mile away or half way across the world, you'll always be with me, and you'll always be my brother.」
(さよならなんてない。お前がどこにいようと、4分の1マイル先だろうと、地球の裏側だろうと、いつだってお前は俺と一緒だ。いつだって俺の兄弟だ。)
やがて道路は二股に分かれ、ブライアンのスープラは夕日の中へと去っていきます。このシーンで流れるウィズ・カリファとチャーリー・プースによる楽曲「See You Again」は世界的なアンセムとなりました。当時のインタビュー取材において、ヴィン・ディーゼルは「あの瞬間、演じていたのはドミニクではなく、親友を失った生身の俺自身だった」と涙ながらに語っています。脚本の枠を突き破り、本物の友情と喪失感が焼き付けられたからこそ、このラストメッセージは世界中の観客の涙腺を決壊させました。