江戸の面影を色濃く残す四間道は、1986年(昭和61年)に名古屋市の「町並み保存地区」に指定されました。しかし、当時の多くの保存地区が直面した「住民の高齢化と空き家問題」という課題は、この街にも無縁ではありませんでした。転機となったのは2010年代以降、景観を壊さずに蔵や町家を息づかせる「リノベーションの波」が起きたことです。
昭和期まで米や味噌、乾物が保管されていた土蔵は、厚い土壁による遮音性と調湿性を武器に、静謐なバーやフレンチの客席へと姿を変えました。通りに面した格子戸を開ければ、梁や柱の経年美を活かした空間が広がり、訪れる人に「日常の延長にある非日常」を提供しています。さらに、隣接するアーケード街・円頓寺商店街が下町情緒と若いクリエイターの出店を融合させた再生事業で全国的な脚光を浴びたことも、四間道の回遊性を飛躍的に高める原動力となりました。
派手なテーマパーク型観光ではなく、本物の木造建築が放つ陰影、石畳を歩く下駄の音、路地裏の風情を五感で楽しむ贅沢。消費の主軸が「モノ」から「情緒ある時間」へとシフトした現在の旅行者や都市生活者にとって、四間道は最も贅沢なサードプレイスとして選ばれています。