日本オリンピック委員会への国民の信頼を根底から失墜させたのが、2020年東京大会を巡る大規模な汚職・談合事件でした。大会組織委員会元理事の高橋治之被告に対する受託収賄罪での摘発を皮切りに、大手広告代理店電通、ADK、角川書店など日本を代表する企業幹部が相次いで逮捕・起訴される異常事態へと発展しました。
この不祥事の真相について、当時の報道各社の取材や内部関係者の証言が浮き彫りにしたのは、「五輪ムラ」と呼ばれるごく一部の特権層による密室意思決定でした。商業利権の差配が一握りの有力者と大手広告代理店に一任され、JOC執行部や監査組織がまったく牽制機能を果たせなかった事実が司法の場で露呈したのです。
この代償は極めて重いものでした。JOCと札幌市が官民を挙げて推進していた「2030年札幌冬季五輪招致」は、市民の猛烈な反発と世論調査での不支持(不支持率が6割を超える調査も頻発)に直面し、事実上の断念へと追い込まれました。公金の使い方や大会経費の肥大化に対する説明責任を長年軽視してきたツケが、未来の日本のスポーツイベント招致の道を完全に閉ざす結果となったのです。