吹奏楽ファンや奏者の間で熱狂的な支持を集める『浄瑠璃姫の物語』。その音楽の核となっているのは、愛知県岡崎市(旧・矢作宿)などに語り継がれる平安時代末期の悲恋伝説です。
物語のあらすじは、奥州平泉を目指して旅をしていた若き日の源義経(牛若丸)が、矢作の地で重い病に倒れたことから始まります。その彼を手厚く介抱したのが、矢作の長者の娘である浄瑠璃姫でした。二人はやがて深く愛し合うようになりますが、武士としての宿命を背負う義経は、形見の銘笛(薄墨の笛)を残して奥州へと旅立たねばなりませんでした。
残された浄瑠璃姫は義経を慕い続け、別れの悲哀と孤独に耐えかねた末、菅生川(矢作川)へと身を投げてしまいます。樽屋雅徳氏はこの伝説に宿る「純粋な愛」「運命の過酷さ」「儚い散り際」を余すところなく音符へと封じ込め、単なる和風描写にとどまらない普遍的な人間ドラマを描き出しました。