ネット上の製品情報や掲示板などで頻繁に見られるのが、「ステンレス製を買ったのに数カ月で錆びた、粗悪品ではないか」という苦情です。しかし、金属加工の専門的な知見に照らし合わせると、これは材質そのものの腐食ではなく「もらい錆(二次腐食)」が原因であるケースが大半を占めています。
水切りラックに多用されるステンレス鋼には、磁石が付かない高品質な「SUS304(18-8ステンレス)」と、磁性がありコストを抑えた「SUS430」があります。SUS304は極めて高い耐食性を誇りますが、濡れた状態の鉄製包丁や缶詰のフタ、スチールたわしを長時間ラック上に接触させたまま放置すると、鉄側の微細なサビ粒子がステンレス表面の不動態皮膜を破壊し、ステンレス自体が錆びたように赤く変色します。これを「ステンレスは錆びないはずなのに騙された」と誤認してしまう利用者が後を絶ちません。
もう一つの深刻な盲点が「一人暮らし向け賃貸における耐震・耐荷重の過信」です。大容量タイプのラックには「耐荷重15kg」と頼もしいスペックが記載されていますが、これはあくまで「静止状態で均等に荷重がかかった場合」の数値です。洗い物を終えた直後の濡れた大皿や鋳物ホーロー鍋を上段のバスケットに偏って置くと、重心が一気に高くなり、水栓レバーを操作した際のわずかな振動でグラつく危険が生じます。
さらに、蛇口背面の壁にコンセントがある場合や、シンク側面に給湯器のリモコンパネルが設置されている物件では、ラックの支柱がスイッチを覆い隠して操作不能になるトラブルも頻発しています。購入前のチェック項目は「シンクの幅」だけでなく、「周囲のインフラ設備との干渉」まで踏み込む必要があります。