日本の精進料理は、曹洞宗のみならず臨済宗の大本山や各地の名刹においても独自の美意識とともに磨き上げられてきた。肉や魚、五葷(ネギやニンニクなど刺激の強い野菜)を用いず、旬の根菜や豆類、海藻を駆使して仕立てられる膳は、制約の中に無限の豊かさを見出す仏教の智慧を雄弁に物語る。
質素でありながら凛とした佇まいを持つ料理の数々は、味覚を刺激で麻痺させる現代の加工食品とは正反対のベクトルを持つ。薄味の奥にある素材本来の滋味を感知しようとするとき、私たちの味覚センサーは劇的に研ぎ澄まされる。それは、足るを知るという禅の根本概念を、舌を通じて直接体得するプロセスでもある。