列島を駆け巡る麻疹感染者数最新ニュースを見るにつけ、誰もが抱く疑問が「なぜ衛生環境の整った日本で、今になって再び麻疹が広がるのか」という点です。その引き金は、国境を越えた人の往来が完全に回復したグローバル社会の構造にあります。
現在、ヨーロッパ諸国や東南アジア、中東の一部など、はしか流行地域国内海外の双方において大規模なアウトブレイクが断続的に記録されています。WHO(世界保健機関)の発表資料によれば、コロナ禍の数年間において世界各国で小児の定期予防接種率が低下し、社会全体の集団免疫に深刻な「空白」が生じました。その免疫の隙間を突くようにウイルスが息を吹き返し、潜伏期間中の渡航者を介して国内へ持ち込まれる輸入症例が相次いでいるのが発端です。
これを受け、厚生労働省麻疹注意喚起が全国の自治体や医療機関に向けて随時発出されています。日本国内自体は2015年にWHOから「麻疹排除国(土着のウイルスが存在しない国)」の認定を受けていますが、排除状態とは「ゼロリスク」を意味しません。海外からの単発的な持ち込みを契機として、未接種者や免疫の切れた成人の間で局所的な感染連鎖が引き起こされる事態が、いま目の前で起きている現実です。