2019年のエンタメシーンを振り返る上で、日本テレビ系で2クールにわたって放送された『あなたの番です』が巻き起こした社会現象を抜きに語ることはできません。原案を手掛けた秋元康氏による「毎週誰かが殺される交換殺人ゲーム」という刺激的な設定は、当初の第1章では世帯視聴率が6〜7%台と低迷を余儀なくされていました。しかし、SNS上でのあなたの番です 考察コミュニティが自発的に組織されたことで、事態は一変します。
視聴者は画面に映る些細な小道具の配置、住民たちの視線の動き、オープニング映像の隠されたヒントを一コマずつキャプチャし、Twitter(現X)上で推理を展開しました。一人の疑問に別のユーザーが証拠を提示して反論を重ねる「集合知型ミステリー鑑賞」の誕生です。第1章の最終回で原田知世演じる主人公・手塚菜奈が毒殺されるという予測不能のトラウマ的展開を機にネットの熱狂は頂点に達し、第2章『反撃編』の最終回では視聴率19.4%という驚異のV字回復を記録しました。
当時の制作プロデューサーが後の取材で「地上波本編だけでなく、動画配信サービスHuluで住民たちの裏の顔を描いた『扉の向こう』を連動配信させたことが、考察熱をブーストさせる計算された導線だった」と明かした通り、テレビとネット配信のハイブリッド戦略における教科書的な成功例となりました。