日常会話のなかで「大と小」という対比で語られるため、兄弟のような関係に見えるが、分類学の視点に立てば両者はまるで異なる旅を経てきた。公益財団法人日本豆類協会の資料を開くまでもなく、大豆(Glycine max)はダイズ属、小豆(Vigna angularis)はササゲ属に属する。属レベルで完全に別物なのだ。
原産地からして違う。大豆の祖先であるツルマメは東アジアの広大な温帯地域で野生化し、油分とタンパク質を蓄える方向へと進化した。一方の小豆は、同じ東アジア原産でありながら、デンプンを主成分としてエネルギーを貯留するササゲ属の性質を色濃く残している。水に浸したときの挙動、火を入れたときの熱伝導率、細胞壁の崩れ方。調理現場の職人たちが皮膚感覚で知る差異は、数百万年規模の植物の進化史がもたらした必然の帰結である。