ネット上のQ&Aサイトや掲示板では、しばしば「大ちゃんは最終的に大富豪の娘・花ちゃんと結婚したのか?」「幼馴染のキクちゃんとはどうなったのか?」という疑問が交わされています。しかし、ここに大きな誤解があります。
多くの人が強烈な記憶として残しているのは、1972年9月に放映されたテレビアニメ版の最終回(第104回)の結末です。普段はおバカなドタバタ劇を繰り広げていた大ちゃんが、東京での厳しい柔道修業と人情の機微を学び終え、ついに故郷・青森へ帰る決断を下します。
上野駅のホームで繰り広げられた別れのシーンは、昭和アニメ屈指の名場面として知られています。大ちゃんに想いを寄せていたキクちゃん、ライバルたち、そして一番の理解者であったニャンコ先生。列車が動き出すなか、大ちゃんはふんどし一丁になって大泣きしながら手を振ります。そこには恋の決着といった俗世的なオチではなく、「少年期の終わりと自立」という普遍的な人間ドラマが描かれていました。
一方、川崎のぼるによる原作漫画は学年誌など複数の媒体にわたって長期連載されたため、連載終了時のトーンは媒体ごとに異なり、よりギャグのテンポを重視したフェードアウトに近い終わり方を迎えています。「大ちゃんが誰と結ばれたか」という二者択一の恋愛ファンタジーではなく、「男一匹、風大左衛門」として己の柔道道を歩み続ける姿こそが、作品が貫き通した美学だったのです。