家庭料理のトレンドを牽引する料理家たちの発信にも、明らかな地殻変動が見られる。SNSやYouTubeを主戦場にバズレシピを連発するリュウジは、うま味調味料や身近な冷凍食品を巧みに使いこなし、「手軽で確実にウマい」合理性を徹底追求して若い世代の胃袋を掴んだ。
一方、コウケンテツは素材の持ち味を最大限に引き出すシンプルな調理工程と、子どもから大人まで親しみやすい温かみのある味付けを提案。日々の献立作りに疲弊した親たちへ「完璧を目指さなくていい」という強い安心感を届けている。
そして、長年日本の家庭料理界をリードし続ける栗原はるみの存在も欠かせない。どんなに時代が移り変わっても色褪せない基本の出汁遣いや、丁寧な暮らしの美学は、忙しい現代人の原点回帰として再び脚光を浴びている。手軽さと情緒、その両極にある知恵を自分流にブレンドすることこそ、現代の台所に求められるスキルだ。