物語序盤、炭治郎は父・炭十郎から受け継いだ舞を「火の神様に捧げる神聖な儀式」として認識していました。しかし、その実態は戦国時代の天才剣士・継国縁壱が生み出したすべての呼吸の源流、「日の呼吸(ひのこきゅう)」そのものです。
では、なぜ「日の呼吸」は名前を変え、剣術ではなく「神楽舞」として伝承されたのでしょうか。そこには、鬼舞辻無惨と上弦の壱・黒死牟(継国巌勝)による苛烈な「日の呼吸の使い手狩り」が存在しました。縁壱の死後、脅威を恐れた無惨らは日の呼吸を知る剣士を徹底的に抹殺していきました。しかし、鬼殺隊の歴史からも完全に消滅したはずの始祖の技が、人里離れた山奥の炭焼き一族の手によって、神仏習合の儀礼舞という完全なカモフラージュのもとで守り抜かれていたのです。
作中で煉獄千寿郎の手紙や歴代炎柱の手記にも記されている通り、「火の呼吸」という呼称は炎柱の家系において固く禁忌とされてきました。「炎(ほのお)」と「火(ひ)」を厳格に区別する鬼殺隊の掟の裏には、始祖たる「日の呼吸」への畏敬と、言葉の混同を避けるための歴史的配慮があったことが窺えます。