日銀は植田和男総裁の主導のもと、長年続いた長短金利操作(YCC)やマイナス金利政策を終了させ、段階的な利上げを進める「金利ある世界」への回帰を定着させました。この局面において、リフレ派の主張はどのように位置づけられているのでしょうか。
学界および経済ジャーナリズムにおける現在の評価は、「危機対応としての劇薬としては極めて有益だったが、平時の経済成長を牽引する万能薬ではなかった」という見方が大勢を占めています。
2013年当時のデフレマインドと超円高によって日本経済が窒息寸前だった局面において、大規模な緩和によってレジームチェンジ(政策方針の抜本的転換)の意思を示した功績は否定できません。しかし、金融政策だけで潜在成長率そのものを引き上げることはできず、構造改革や生産性の向上という本質的な課題を先送りしてしまったという負の側面も厳然たる事実として残りました。
【プロの結論】経済政策の二極化に惑わされないためのリテラシー
報道各社やSNS上の経済言論を見渡すと、「リフレ派こそが正義であり、反対派は財務省の回し者だ」という陰謀論的な擁護論と、「リフレ派のせいで日本は没落した」という過度な断罪論に二極化しがちです。
しかし、経済とは複雑な生態系です。金融政策はあくまで「体温を一時的に上げるための解熱鎮痛剤や輸血」のような対症療法であり、それ単体で体質を改善して筋肉をつける(潜在成長率を上げる)魔法ではありません。政策の特定の局面だけを切り取って全面肯定・全面否定する言論に惑わされず、「どのフェーズで有効であり、どこから副作用が上回ったのか」を客観的に見極める複眼的な視点を持つことが肝要です。