赤星をめぐる言説の中には、製法や流通に関するいくつかの誤解が存在します。その最たるものが、「熱処理ビールは、生ビールを造る技術がなかった時代の古臭い劣化版である」という認識です。昭和末期に巻き起こったいわゆる「ドライ戦争」以降、日本のビール市場では「生=新鮮で美味しい」「熱処理=古い」という二元論的なマーケティングイメージが定着してしまいました。
しかし、醸造学の観点から見れば、この認識は明確な誤謬です。熱処理によってもたらされるアミノ酸や糖の微細な熱変化は、ワインの熟成にも似たまろやかさと、独特のカラメル香に近い香ばしさを生み出します。世界を見渡しても、ベルギービールや一部の伝統的なヨーロピアンラガーでは、狙った風味プロファイルを作り出すためにあえて熱処理や瓶内二次発酵を採用するケースが多々あります。赤星が熱処理を守り続けているのは、技術的な制約ではなく、「この製法でしか到達できない味の頂点」が存在するからです。
また、ネット上で頻繁に囁かれる「赤星は飲食店専用だから一般人は絶対に購入できない」という噂も正確ではありません。確かに基本は業務用の流通網に乗せられていますが、一般消費者であっても正規の酒販店や大型リカーショップを通じて瓶を購入することは完全に合法かつ可能です。希少性を強調するあまり、都市伝説めいた情報が独り歩きしている実態には注意が必要です。