映画の核心となるヒロイン・宮水三葉が暮らす「糸守町(いともりまち)」のモデル地を巡っては、公開当時から多様な言説が飛び交ってきました。結論から述べると、糸守町という自治体は実在しません。新海誠監督自身が過去のインタビューや公式ビジュアルガイドで言及している通り、岐阜県飛騨地方の伝統的な町並みや自然、そして監督の出身地である長野県の湖沼風景が高度に融合された創作の舞台です。
その中でも、劇中で瀧が三葉を探して降り立った飛騨古川駅(岐阜県飛騨市)は、ほぼ完全な実実写トレースとして描かれた決定的なロケ地です。駅舎の構造、跨線橋から見下ろす線路のカーブ、駅前に常駐するタクシー乗り場の配置に至るまで、映画の世界そのものが広がっています。
飛騨エリアで訪れるべき主要ロケ地には、以下のスポットが挙げられます。
- 気多若宮神社(飛騨市):瀧たちが糸守町の聞き込み調査を行うカットで登場する、長く伸びる石段と厳かな社叢。
- 飛騨市図書館:瀧が糸守町の過去や災害の記録を調べた場所。カウンターで申請を行うことで館内の写真撮影が許可されるなど、文化施設としてのホスピタリティと聖地対応が両立されています。
- 落合バス停:瀧と司、奥寺先輩が雨宿りしながら途方に暮れていたバス停のモデル。
一方、隕石落下の爪痕を残すカルデラ湖「糸守湖」のビジュアルモデルとして広く知られるのが、長野県の諏訪湖です。立石公園の高台から見下ろす諏訪湖のパノラマビューは、夕暮れ時の「かたわれ時」を彷彿とさせる圧倒的な円弧を描き、諏訪湖と糸守湖の聖地としての認知を不動のものにしました。あわせて、新海監督の故郷である小海町に位置する「松原湖」や北八ヶ岳の植生も、山深い宮水神社の御神体周辺の原風景として投影されていることが分かっています。