新興宗教団体にとって、知名度と好感度を持つ芸能人を信者として獲得することは、布教活動における最大の武器となります。いわゆる「芸能界 宗教 広告塔」問題は、タレント自身のタレント生命のみならず、クライアントや所属事務所に計り知れない損害を与える火種となってきました。
その原点とも言えるのが、1992年にソウルで開催された世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の合同結婚式です。当時トップアイドル・女優として絶大な人気を誇っていた桜田淳子や、元新体操日本代表の山崎浩子が参加を表明したことで、列島に大激震が走りました。桜田氏は記者会見の席上で「私の人生はすべて神様と先生に捧げられたもの」と毅然と語り、世間に強い衝撃を与えました。しかし、この公然の信者宣言により、桜田氏は大手スポンサーの撤退、テレビ局の自主規制によって事実上の芸能界引退へと追い込まれることになります。
対照的だったのが、山崎浩子氏の「脱会劇」です。山崎氏は親族による決死の説得と保護、元信者や牧師によるカウンセリング(ディプログラミング)を受け、46日間に及ぶ対話の末に脱会を決意。涙の記者会見で「自分が信じていたものは偽りだった」と語った姿は、マインドコントロールの恐ろしさと、そこから脱出する難しさを全国に知らしめました。旧統一教会を巡っては、信者が集めた巨額の献金が教団本部に送金されていた実態が司法の場でも認定されており、有名人の存在が一般信者の入信や献金を正当化させる強力な心理的担保となっていたことは否めません。
また、幸福の科学へ出家した清水富美加のケースでは、撮影中だった映画の降板や、広告契約の途中破棄に伴う違約金トラブルが表面化しました。教団側が「魂の救済」を主張する一方で、所属事務所側は契約不履行による損害賠償責任を追及するなど、信仰の自由と商業契約の法的義務が真っ向から衝突。芸能界において「教団への過度な傾倒」がタブー視される背景には、突発的な引退や契約破棄によって数億円規模の損害賠償が発生するという極めて現実的な経済的リスクが存在しているのです。